白野週報

Molière a du génie et Christian était beau.

最近の劇界について二つ

 今月は劇場に行く気が湧かず芝居も映画も見なかった。めぼしいものがないといえばそれまでだが、めぼしいものがなくても劇場に行くのがシアターゴーアーなのだから、ひょっとしたら自分はそんなに芝居が好きではないのかもしれないと思わなくもない。

 宝塚がハラスメント問題でてんやわんやとなっているが、「清く正しく美しく」というのは芸能がそもそも清くも正しくもないということが大前提なのだから一皮剥けば嫌なものが出てくるというのは当然といえば当然の話だ。しかし、ブランディングというのはいかにしてそういったイメージに観客を誘導するかがキモなのだから、それに乗せられる観客のことを批難したって始まらない。問題なのは、愛着の対象を守るために敵愾心を剥き出しにして被害者を批難する人が少なからずいることだ。思い込みで他人を傷付けるようなことを言うものではない。

 歌舞伎の方も執行猶予付きの判決ということで一旦は解決を見たが、事の重大性に対してファンがあまりに甘い事をいうので辟易とする。批評家の某先生が故段四郎丈がまるで著名タレントの添え物のごとく報じられていることに怒り心頭だった。私が芝居を見始めた頃には段四郎丈はすでにリタイアしており見ていないが、その怒りはもっともだと思う。