白野週報

Molière a du génie et Christian était beau.

最近の観劇マナー

 最近、商業演劇を見物に行くと観客のマナーが悪くなったような気がする。通路をふさぐようにスマートフォンに熱中する人、開演後もなにかおしゃべりを続けている人、ビニール袋をがさがさと鳴らす人。私の鑑賞態度が必ずしも良いものであるとは思わないが、少しばかり目に余るところがある。また、いま挙げた中では通路をふさいで何かしている人というのは劇場固有の問題ではなく、私の活動範囲について言えば町全体で悪化しているように思う。もっとも、改札をふさぐように熱烈なキッスをしているカップルなど、昔からいるにはいた。コロナによって途絶えた人流がある程度回復したことで、元々いたマナーの悪い人達が劇場に戻ってきたのか、あるいは客層がコロナ禍を経て入れ替わったのか、それはいまはまだ分からない。

 私の上司は映画館でのスマホ仕様が目に余ると苦言を呈していた。私はここ数年あまりヒット作は観に行かず、おおむね作品なり監督なりのファンが観に行くようなものばかり劇場で見ているのであまり実感は湧かない。SNS上で同様の意見を口にしている人がいたので、実際問題として多いのであろうと言うことは想像がつく。商業演劇の劇場は観客人口が高いので、上演中のスマホ使用というのはあまり見た記憶がない。ただ、電源の切り方もマナーモードの設定も分からずに大音量で着信音を鳴らし、パニックを起こしていつまでも着信を止められなくなっている人というのは年に一人ぐらいは見る。

 商業演劇など元より享楽であって「観賞」という態度で観るものではないというのも、ひとつの見解ではある。そもそも居住まいを正し、舞台と正対して沈黙しながらひたすら視線を注ぐというスタイル自体、案外最近のものだという話を聞いたことがある。そのようなものにまた回帰していくというなら、それはそれで良い。しかし、今年に入ってから観客に質が変わったということだけは、間違いのないことであると思う。