白野週報

Molière a du génie et Christian était beau.

最近買った本

 先週も今週も土日に仕事が入っていて全く休まらない日が続いている。世の中にはもっと忙しい人がたくさんいるのでぼやいてもいられないが、しかし自分より大変な人がいるからと言って自分が大変でなくなるわけではないので、どうしたものかと考えあぐねている。

 人と会わず、仕事の事ばかりやっていると考えがどんどん内向きになってしまって困る。内向きになって最後に行きつくところは私の場合、考えたって仕方のない社会に対する不満のことばかりなのでこうして他人に向かって語り掛けるという体裁でなにかをする必要があるがその「なにか」にしてもまとまらないまま半年一年と無暗に時間を使っている。「駄作でもいいから仕上げる人がいちばんエライ」という俗説というか風説というか、そういう言説があるがあれはまったくもって真実であると思う。スタートラインにたどり着くというだけでも案外大変なことなのだと思わされる。

 買っただけで読んでいない本が山積みなのでなるべく本は買わないようにしていたが、新書はすぐに読めるので以下の四冊を新しく書棚に加えた。

 

小川孝行、ウマフリ『テイエムオペラオー伝説』星海社、2022年10月

尾脇秀和『お白洲から見る江戸時代』NHK出版、2022年6月

戸部田誠『芸能界誕生』新潮社、2022年6月

山口輝臣、福家崇洋編『思想史講義【明治篇Ⅰ】』筑摩書房、2022年10月

 

 2022年出版の本をまとめて買うというのも珍しい。新潮新書もほぼ買わないので新潮新書の本が入っているというのも私としては珍しい、文庫本は新潮社のものが一番多いが、新書を眺めたところ新潮新書はこの一冊だけだった。ちなみに新書で最も多かったのは『明治史講義』~『昭和史講義』のシリーズで数を稼いだちくま新書だった。ダンボールに仕舞ったものを合わせるとどうなるかは数えていないので知らない。このダンボールの中の本も目録を作らないとどうしようもないと思いながら忙しいのを言い訳にしてやらないままでいる。

 また、近くの図書館になかったので穂積重遠の『歌舞伎思出話』(大河内書店、1948年10月)も買った。戦後間もなくの本は紙質が他の時期に比べて圧倒的に劣っており、太宰施文の『古典演劇』なども状態がかなり悪い。大正年間に出版された本と比べても大抵の場合この戦後間もなくの本の方が状態は悪いと言っていいだろう。著者の穂積重遠は戦前に活躍した法学の大家で一般向けの法律解説(という呼び方でよいのだろうか)を多く書いている。法学を修めた知人が周りにいないので今日的な知名度は知らない。平易な文章で読みやすく、江戸に育った父母のもとに生まれた明治青年が送った趣味生活の有り様というのが実に楽し気に描かれている。