白野週報

Molière a du génie et Christian était beau.

レモンの木に湧くアゲハチョウ

 ベランダに置かれたレモンの木にアゲハチョウが卵を産みに来ていた。ガーデニングの観点からいえばアゲハチョウも害虫には違いない。木を丸禿にされてしまったという話も聞いたことがある。実際、園芸趣味の知人は芋虫と見るや片っ端から処分していると言っていた。いくら虫と人とでサイズが違うと言ってもお互いの取り分を巡っての争いなのだから、さのみ残酷だとも思わない。

 レモンを採ることを目的としているわけでもないので、うちでは芋虫が何匹ついていようと今のところ黙認している。レモンが枯死するほど食い荒らされるようなら駆除せねばならないが、いまのところそういう気配もない。むしろ、ほとんどが終齢幼虫になる前にいつのまにか姿を消している。先日何匹か終齢を迎えていたが、翌朝には影も形も見当たらなかった。蛹になるために余所へ移ったということも考えられないでもないが、捕食者の手に掛かったのだろうと考える方が自然だ。このあたりは鳥がとにかく多いし、木の上になんらかの寄生バチ(名前は知らない)やクモが止まっているのをよく目にする。こちらも、よほど増えて困るようなことがなければ自然の成り行きに任せるつもりだ。暇つぶしにレモンの木を眺めていると、芋虫が明らかに攻撃されているのを目にすることがある。気分はあまり宜しくないが、自分の快不快のみを理由に自然の摂理に手出しするのはあまりいいことだとは思われない。そもそも芋虫にばかり肩入れして割を食うのは、新芽をまりまりと食い散らされていくレモンの木なのだから。

 近頃は、家にいて暇なときはレモンの木を眺めてばかりいる。虫はそもそもあまり好きではないが、ガラス越しによく動くのを見るのは面白い。それに、レモンの木の状態だってチェックしなければならないことであるし。生まれては消えていく幼虫のうち何匹が蝶になれるのかは分からない。ひょっとすると、全滅と言うことだってあり得るだろうか。近所の河川敷を歩くとやたらに蝶が飛んでいるが、彼らはほんの一握りのエリートに他ならない。