白野週報

Molière a du génie et Christian était beau.

データベースの進歩

 コロナ禍の好影響と言うべきか、ここ最近になって国会図書館デジタルデータベースの利便性が飛躍的に向上した。自宅から見られるデジタル資料が飛躍的に増え、(おそらく)ほとんどの資料が全文検索に対応しているため特定のキーワードについて網羅的に調べることがかなり容易になった。ある先生は「これからの時代、なにを調べ上げてくるかでなくなにを切り捨てるかで腕前が問われる」とこぼしていた。その通りであると思う。

 しかし、データベースの利便性が上がる一方でデータベースの外側にあるものはどんどん調べ物から取りこぼされがちになっているのではないか。たとえば、以前から新聞にしても利用されるのは大抵、精度、可読性ともに高いデータベースを誇る『朝日』と『読売』が中心で、同じ大手でもデータベースが極めて扱いにくい『毎日』は無視されがちだ。『やまと』『国民』『都』『時事新報』『萬朝報』など目的に合わせて参照するべきだろうと思うし実際、マイクロフィルムや複製版からデータを集めてくる人の方が今でも多数派ではある。しかし、素早く大量の成果を挙げることが求められる以上、そういう手間のかかる作業が必要な分野よりデータベースからなんでも引き抜ける分野が有利ではあるまいか。何事にも流行り廃りはある。データベースの整備によってなにが進展するかも大事だが、なにが廃れていくかにも注目したいところだ。