白野週報

Molière a du génie et Christian était beau.

見逃した映画

 緊急事態宣言なる、おととしまでは耳にすることのなかった宣言が幾たびも発令される間に『機動戦士ガンダム』シリーズの『GのレコンギスタⅢ』と『閃光のハサウェイ』の劇場公開を見逃した。見逃した映画を劇場で見る機会は与えられないのが普通で、どちらも名画座の類で公開されることは期待できない(仮に公開されたとしてもそれはきっと何年か、あるいは何十年か先の事だろう)。どちらも連作になっているため、一本見逃すと大変にキモチワルイ。キモチワルイが、こういう世の中であるので仕方があるまい。

 最後に劇場で見た映画は『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい』だったと記憶している。『恋するシェイクスピア』の二匹目を狙ったような映画で、少しどうかと思うシーンもいくつかあったが概ね楽しく鑑賞した。もっとも、ロスタンのミューズとして設定されたジャンヌ嬢を舞台に立たせるために、それまでさんざん『シラノ』の出来栄えを褒めていた女優マリアが突然脚本にケチをつけ始めるシーンは、「少しどうか」を超えた破綻ではあったのだが。

 映画館は安全であると頭では理解していても、あらゆるものを振り切っていこうという気持ちになれないのは我ながら情けないことだ。私は別に「映画館で見なければ映画ではない」と考えているたちではないのだが、やはり映画館に行く快楽というものはある。私はあと何本映画を見逃すのだろうか。

 これ以上話を進めても気分に引かれるまま暗い方へばかり進みそうなので今日はここで筆を置く。